漫画「神田ごくら町 職人ばなし」
久々に心を打たれる漫画に出会った。
書店を歩いていると目についた表紙とタイトル、どこか惹かれるものがあり即購入。
日本伝統の手仕事を、時代を遡り情緒的に描かれた胸が熱くなる良書をぜひ紹介させていただきたい。
「神田ごくら町」を舞台に、江戸職人の技と意地と人間模様を圧巻の描写と精密さで描かれている本書。
第一巻は桶職人、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官職人が主人公である。
なによりこの漫画の凄いところは、当時の職人の細かな情報の描写と繊細緻密な絵。
ちょっとした人間の感情の変化を違和感なく表現している著者の絵力に、読み進める毎に引き込まれていく。
まるで自分がタイムスリップしたかのように、その場の一住民であるかのようにスッと没頭して向き合える。
町人文化の資料と人情話の中間のような脳に心地よい漫画であります。
日本の伝統技術、文化の歴史書としても貴重であると思いました。
こういった日本の文化や伝統技術が今の私たちの暮らしを支えているということを知らないという方々が多いのも事実です。
私個人がこの漫画から強い刺激と共感を抱いたのが「人生をかけて一つのことを極めようとする人々のカッコよさと美しさ」
今は各個人が自由に様々な分野の仕事を同時にこなすことがし易い時代であるように思います。
副業という言葉が流行し始めたのも最近であります。
その反面で、一つのことに固執し続けることに不安を抱くことや、誰もが多くの情報を入手できるようになり他人と比べて自分が何者であるのかを見失っている人も多くなってきているように感じております。
これは世界的な時代の変化や政治的な側面もありますし、この流れが良い悪いと決めつける必要もない。
ですが、あくまで私個人の想いですが、強い信念を抱き確固たる志で、時代の流れや流行りなどには目もくれずに、一つの物事を極めようとしている人や極めている人に、とてつもなく魅力を感じ、尊敬の念を抱くのです。
人生をかけてただひたすらに、ひたむきに技と知識を日々磨き、それを持って地域の人々の暮らしをそっと支えている、この漫画の主人公たちと同じように…。
表舞台には立てないかもしれないし、別に立つ必要もない。
それでも届けるべき人には確実に届いている。
必要としている人に頼られて、笑顔と安心を与えて、感謝される。
江戸職人の技と心意気で。
ここにカッコよさと美しさを感じるのです。
昔と今では何もかもが全く違うが、技と心意気だけは変わらない。変えてはならない。
本当に大事なことを改めて知らせてくれたこの本との出会いに感謝ですね。
今の時代に生きる全ての人にぜひ読んでいただきたい良書でありました。
ぜひ手に取ってみてくださいませ。